公益財団法人埼玉りそな産業経済振興財団

調査研究レポート

2020年11月01日

防災・避難・復興における女性の視点の必要性

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地域コンサルティング青木 淳子

趣旨

 今年に入って全世界を襲ったコロナ禍の下では、平常時においてなんとなく見過ごされてきた問題がより明確な形で人々の眼前にさらされることとなった。 男女の社会的、経済的格差や性別役割分担による弊害もその一部である。たとえば、一斉休校処置によって子どもの世話をするために休業を余儀なくされたのは女性労働者が多いこと、男女共に在宅勤務が増えたが、その結果、女性に家事労働の負担がさらに偏重した家庭が多かったこと、経済活動の停滞によってより多くの女性の労働者が失職したり収 入の減少に直面したことなどがあげられる。非正規雇用者は女性の割合が高いため、平常時における男女の格差について、非常時にはより大きな影響が及ぶ。さらに、緊急事態宣言下においてステイホームを余儀なくされたことから、DVや児童虐待の被害の増加が報告されている。 コロナ禍の様な非常時においては、平常時から存在していた社会の歪みの影響がますます増幅されてしまう。それは災害時も同様である。コロナ禍においてはステイホーム、災害時においては家を喪失する 人がいるという正反対な状況ではあるが、経済活動の停滞によってより多くの女性労働者の雇用状況が悪化したり、被災者のストレス増加等によってDV被害や児童虐待が増加すること、女性に家事労働やケア労働(育児や介護等)の負担が過重にかかることなどは共通している。 ここ数年、日本では毎年のようにどこかの地域が大地震や台風等による水害に見舞われている。私たちは、災害という非常事態が、明日、自分に降りかかってもおかしくない状況に置かれているといっても過言ではない。本稿では、災害にまつわる防災・避難・復興の各段階における女性の視点に立った対応の必要性について取り上げていくこととする。

目次

  • はじめに
  • 防災・災害時における女性の視点の必 要性の認識
  • 平常時における災害への備え
  • 避難所運営における課題
  • 復旧・復興に向けての課題
  • 災害対応に携わる職員や支援者への 視点
  • おわりに
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